僕がセッションしているお客さんの中で、歩く時に膝が痛い人がいます。
その人は、腰が丸くなっていて股関節が使いづらいので、歩く時に脚を前後に動かすことができず、どうしても、横から振り回すように動かしてしまうのです。
そのような脚の使い方を長年していたため、膝に捻れがおこってしまい、膝が伸びなくなってしまっています。
今ではかなり改善されてきましたが、それでもたまにまだ膝が痛いそうです。
その人曰く、「走っている時は痛くないのに、歩くと痛い」とのことです。
その人は活発な人で、毎朝散歩がてら近所をランニングするそうです。
普通は歩いて膝の痛みを感じる人が、走ろうなんてあまり考えないので、珍しい例かもしれません。
しかし、物理を考えれば、実際に起こりえます。
それを考えるにあたって、「歩く」と「走る」の境界線を考えなければなりません。
「歩く」というものの限界は、競歩にあると思います。
競歩のルールの一つに、ロスオブコンタクトと呼ばれるルールがあります。
これは、どちらかの足が地面に接していなければならないというものです。
つまり、両足同時に地面から離れることがあるかどうかが、「歩く」と「走る」の境界線なのです。
この境界線を踏まえた上で、歩くと走るを比べても、ジャンプして着地するのと同じ状態である「走る」ほうが、膝への負担が大きいような気がします。
確かに、膝にかかる負担の最大値は、走る方が大きいでしょう。
しかし、それでもなお、歩いたほうが痛い場合がある理由があるのです。
それは、「歩く」動作では足に地面がついているからです。
走っている場合は、身体が空中にあることがほとんどです。
空中にいる間は、足は自由に動かせる上、荷重がかかっていない状態です。
一方、歩いている場合は、どちらかの足が常に地面についている状態です。
つまり、常にどちらかの足に荷重がかかっている状態なのです。
荷重がかかっている状態で脚を動かすことになるので、動かす場所によっては、身体に負担をかけることになってしまうのです。
今回話にあがったお客さんの場合、股関節が動きにくいので、それ以外の膝関節、足首(足関節)、足指などによって脚を動かし、体重を移動させることになります。

それが、膝関節中心になれば、膝関節に負担がかかることになります。
膝は、縦方向に曲げる伸ばすが基本の関節で、横方向の負担に弱いです。
この脚を動かす際に横のストレスがかかっていれば、膝が痛くなってもおかしくありません。
このように「歩くと膝が痛いけど、走れば痛くない」という状況が生じるのです。
この状況は、脚を適切に前後に股関節から動かせるようになれば、改善される可能性が高いことを意味しています。
膝に負担に多少大きな負担がかかることは問題ではないので、横ストレスが少なくなる身体の使い方を普段からできるようになることが大切になります。
実際に、このお客さんは、セッションの中で股関節から脚を前後に動かして歩くことができれば、痛みを感じません。
身体の痛みの原因は、絶対にこれと断言することはできませんが、このようにできるだけ当たりをつけて対策を考えることで、改善と予防に繋がってきます。