呼吸が大事であることはよく言われていますね。
肉体面でも、精神面でも影響があることが指摘されています。
でも、実際呼吸というのは何をしているかと聞かれれば、酸素を吸って二酸化炭素を吐いているくらいのイメージしか浮かばない人もいるのではないでしょうか?
そこで、今回は呼吸についてお伝えしていきます。
呼吸は、実は大きく、細胞呼吸(内呼吸)、肺呼吸(外呼吸)の2種類あります。
細胞呼吸とは、簡単にいうと、細胞が酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出することをいいます。細胞内では、栄養素と酸素を反応させてエネルギーを取り出しますが、その結果二酸化炭素が生成されます(物質代謝)。そのため、エネルギーを生み出すためには、酸素が必要であり、生成物である二酸化炭素を追い出すために呼吸します。
人間は、細胞呼吸によって排出された二酸化炭素を、体内から排出し、酸素を取り入れて細胞に送らなければなりません。そのために、肺で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換を肺呼吸といいます。
人間の酸素と二酸化炭素の出入りは、安静状態の成人で、1分間に酸素が250ミリリットル、二酸化炭素が200ミリリットルくらいだそうです。激しい運動をした場合には、この数倍以上にも達するうようです。しかも、体内の酸素貯蔵量はせいぜい1リットル余りでなので、呼吸による酸素の取り入れは、すこしも休むことのできない重要な身体活動だといえます。
この記事では、外呼吸について書いていきます。
肺に空気を出入りさせるには、肺を膨らませたり、しぼんだり(元の状態に戻る)しなければなりませんが、肺自体には心臓のように筋肉がついていないため、横隔膜の上下動や肋骨を動かすことによって胸腔を広げたりすることによって行います。この仕組みは注射器をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。レバーを引くと注射器に空気や水が入り、押すと出ていくのと同じように、横隔膜を収縮させて下げると、肺に空気が入り、弛緩して上げると空気が出ていきます。
肺に取り込まれた酸素は、肺の中にある肺胞に取り込まれ、肺胞から肺の血液へと拡散し、そこから血液に乗って全身に送られます。一方、二酸化炭素は、血液に乗って肺に集められ、肺胞内に拡散し、体外へ排出されます。
ところで、呼吸法にはさまざまな方法がありますが、この記事では胸式呼吸、腹式呼吸、首と肩を使った呼吸についてお伝えします。
まず、胸式呼吸とは、腹を凹ませ、横隔膜をできるだけ動かさないようにし、胸を広げたり、戻したりして行う呼吸方法をいいます。ピラティスでも基本とされる呼吸法です。
腹は常にへこませ続け、肋骨を横に開いたり閉じたりするように呼吸するのがコツです。
この呼吸法は、肋骨の骨と骨の間にある肋間筋の働きをよくし、普段取り込む空気量を増やすことができます。また、腹を凹ませ続けることになるので、腹部のインナーマッスルである腹横筋を強化できますし、内臓の垂れ下がりを防ぐ効果もあります。さらに、交感神経を活発にして筋肉に軽く緊張状態を作り出し、体を動かす準備態勢をととのえることができます。
腹横筋を強化することで、腹部にさらしを巻いているのに近い状態となるので、腹部引き締めに役立ちます。よく、腹を凹ませようと腹直筋(腹を板チョコのように割る筋肉)ばかり鍛えている人がいますが、そんな人の中には、目に見える腹筋はよく割れているように見えるけど、腹筋が大きくなった分、腹が凹むどころか出てきてしまうという人がいます。僕も昔そうでした。腹の出具合が気になる人は、呼吸をもっと重要視するのと、腹を凹ませる練習をすべきだと思います。腹を意識的にへこませられる人って意外と多くないようです。
さらに、腹横筋の強化は姿勢改善にもなります。
そして、内臓の垂れ下がりを防止できれば、下腹ぽっこり改善に役立ちます。体全体は細く見えるのに、下腹だけぽっこり出ているという人は、内臓が垂れ下がっている人が多いです。
腹式呼吸については、横隔膜をしっかり使うために、腹を出したりひっこめたりすることによって行う呼吸法のことをいいます。
この呼吸法は、横隔膜を刺激することによって副交感神経が優位になることによって、リラックスできる効果があります。寝ている間も、自然とこの呼吸になります。また、リズミカルな腹部の収縮により、胃腸や肝臓などの腹部神経叢(太陽神経叢)内臓の働きを整えます。
腹式呼吸と胸式呼吸のイメージとして、注射器の例から説明すると、腹式呼吸は、レバーを上下させ、胸式呼吸は、レバーを動かさずに、注射器の本体部分が大きくなったり小さくなったりするのが胸式呼吸です。
もうひとつ、首と肩を使った呼吸ですが、これは、全力で走った後の呼吸の仕方を思い浮かべればイメージしやすいと思います。
普段の呼吸では間に合わないほど体が酸素を必要としている場合、首と肩の筋肉を使って肩を引き上げ、胸郭を広くすることで、より多くの空気を吸うことができます。
僕はこれを肩呼吸と呼んでいます。
ただ、この呼吸の仕方が日常化していると、首や肩のコリの原因となります。
呼吸法については上記で以上ですが、最後に、ちょっとずれるかもしれませんが、息を止めることによっておこるバルサルバ効果について説明します。
バルサルバ効果とは、いきむ(息む)動作で呼吸が止まり、筋緊張が起こることで普段より筋力が発揮できる生理的な現象のことをいいます。
重い物を持とうと力むと自然と呼吸が止まるのは、無意識にバルサルバ効果により、筋収縮力を最大限発揮するためなのです。また、体幹部の筋緊張により、体幹の強度が増加し脊椎が安定するので、重いウェイトを持てるようになります、とくにスクワットのような脊椎に負担をかけやすいトレーニングでは、バルサルバ効果は重要です。
ただ、バルサルバ効果により、血圧が上昇したり、心拍数が増加するので、循環器系が弱かったり、疾患がある人は死亡することもあります。そのため、ほとんどの場合トレーニングは呼吸を止めずに行うことが推奨されています。
20200223追記
呼吸は、自動でも行われるし、自分の意思でもコントロールできるというセミオートマチックのシステムです。
身体の機能の中でも珍しいですね。
呼吸がそのような自動システムと手動システムのどちらも持ち合わせているということは、手動での動かし方(呼吸の仕方)により、自動システムで動いている他の身体の機能にも干渉できる可能性がありそうです。
実際に深呼吸すれば、精神的に落ち着いてくるのはあなたも実感したことがあると思います。
これは、呼吸が自律神経が絡んでくるからです。
まだまだ呼吸には未知の可能性を秘めていそうで、さらなる研究が必要だと考えてます。
あと、バルサルバ効果について言及しておきます。
バルサルバ効果は、いきむ(息む)動作で呼吸が止まり、筋緊張が起こることで普段より筋力が発揮できる生理的な現象とお伝えしました。
ただ、僕の個人的な感想でしかないんですが、逆じゃないかと思うんです。
呼吸するにも筋肉の力は必要です。
しかし、全身の筋肉の力を発揮せざるを得ない状況になると、呼吸のために使われる余裕がなくなることによって呼吸が止まるんじゃないかと。
というのは、血圧の上昇が筋力の上昇につながるというのがどうにも僕には理解できないのです。
血圧が上がるのは筋緊張によって血流が制限されるからであって、筋力発揮のためではないんじゃないかとも思えるのです。
そう考えれば、トレーニングにおいて息を止めないように動作するというのは、余裕がある状態でトレーニングしていることになり、過負荷の原則からすると不十分だと考えられるのです。
また、力を最大限発揮できないということで、怪我のリスクも考えられます。
トレーニングにおいて過負荷になっているかどうかの1つの目安として、また安全面の上でも「呼吸が自然と止まるか否か」は考えられるのではないでしょうか?