「姿勢」について検索する人は「矯正」という言葉と合わせて検索される方が多いようです。
さらに「姿勢 矯正」で検索する人は、「椅子」「ベルト」「クッション」などといったた言葉を加える人も多いようです。
姿勢矯正というと、まずは自分で姿勢矯正グッズを買ってどうにかしようという人が多いんですね。
そこで、今回は姿勢矯正グッズで姿勢が矯正されるのか、姿勢改善を得意とするトレーナーの目線からお伝えしたいと思います。
まず、結論からいうと、一時的に姿勢の矯正はできるが、根本の解決には至らない場合が多く、グッズの使い方によっては、姿勢が悪くなってしまう場合すらあると考えられます。
姿勢矯正グッズは、姿勢矯正のために作られているものなので、もちろん、姿勢矯正の助けになってくれます。
長年の姿勢習慣から、良い姿勢が自分の力でとりづらいという人にとっては、特にその効果を発揮してくれるでしょう。
しかし、いかなる道具も使い方によってメリットも生じさせるし、デメリットも生じさせる可能性があることは肝に命じておかなければなりません。
たとえば、車でも、長距離を少ない労力、短い移動時間で移動できるようにしてくれる便利な道具です。
反面、気をつけて運転しなければ、人や物を傷つける凶器にもなります。
姿勢矯正グッズにも同じことが言えるのです。
では、姿勢矯正グッズを適切に使うためには何が必要でしょうか?
それは、姿勢についての理解と、姿勢矯正グッズそれぞれのメリット・デメリットを理解しておくという2点です。
姿勢矯正グッズは、良い姿勢を保つための助けにはなりますが、良い姿勢を教えてくれるわけではありません。
使用者が良い姿勢を理解し、良い姿勢をとるのに助けになるように使ってようやく、姿勢矯正がうまくいくのです。
姿勢についての大まかな理解は以下の記事を参考にしてください。
次に、姿勢矯正グッズ全体のメリットについてです。
姿勢矯正グッズのメリットは、もちろん、良い姿勢でいるための助けになってくれる点です。
この点は、姿勢矯正グッズが、姿勢を正すためにつくられているので当たり前のことです。
そして、姿勢が矯正されることにより、筋肉の緊張がほぐれ、身体が楽になる可能性が高いということです。
筋肉の緊張がほぐれることで、良い姿勢をとるために邪魔をする部分が減り、自分でも良い姿勢がとりやすくなる可能性があるということです。
一方、デメリットは、姿勢矯正グッズを使うことで、自分の力で良い姿勢を保つことが困難になる場合があることと、姿勢矯正グッズは個人差の調整が難しいということです。
姿勢矯正グッズに頼っていると、良い姿勢になっている状態のときの、全身の感覚が、自分の力で良い姿勢をとっているときと異なる可能性があるのです。
そうなると、矯正グッズなしに良い姿勢をとることが困難になってきます。
身体にとって負担が少ないかと、感覚として楽かどうかは別であることもありますしね。
また、姿勢矯正グッズは万人に向けて作れらているので、個人差をカバーしきれずに、はからずもグッズが意図していない使用状態になってしまう可能性があることがあることです。
この意図しない使われ方によっては、姿勢矯正どころか、さらに姿勢が悪くなってしまう可能性もあります。
なので、姿勢矯正グッズを使いこなすために、前述の姿勢の理解に加え、それぞれの姿勢矯正グッズが何をしてくれるかも考えなければなりません。
そこで、以下からは、僕が目についた姿勢矯正グッズそれぞれの特徴についてお伝えしていきます。
椅子・座布団(クッション)タイプ
姿勢矯正グッズで最も多いのが、椅子になっているタイプではないでしょうか?
以下みたいなグッズですね。

座椅子形状(ちょっと高め)

座椅子形状

クッション形状
クッション形状の場合は持ち運びしやすいですね。
椅子タイプの特徴としては、普段の姿勢を変えるためというよりは、座っている状態での身体の負担を減らすことを目的としていることです。
なので、座っている状態での身体の負担軽減には効果的ですが、姿勢矯正になるかと問われれば、変わらないであろうと答えざるをえません。
ただ、柔軟性によっては、座っている状態というのは、立っているとき以上に身体に負担の少ない姿勢をとるのは難しいのです。
また、座って作業する場合などには長時間にわたる場合が多いですし、作業に集中すると、姿勢に関する注意がどうしても向きにくくなってしまうので、大いにグッズに頼ったほうがいいと思います。
まとめると、椅子タイプは、姿勢の矯正ではなく、座ったときの身体の負担を減らすことがその機能なので、身体の負担を減らすために大いにに頼るべきです。
いうなれば、座っている間だけの姿勢矯正です。
ただ、座ることそれ自体が本来自分がとれる姿勢を矯正するわけではないことを理解しておくべきでしょう。
身体に負担の少ない座り方の基本は股関節、膝関節、足関節3箇所を90°に保つことです。
椅子ではなく地べたに座る場合は股関節の90°に注意しましょう。
そうすることで、骨盤の上に背骨、頭が積み上がり、筋肉への負担が大幅に減ります。
ただ、それだけだと、座った時の身体の底にあたる骨盤の底、坐骨周辺にかかる負担が大きくなるので、椅子にもよりますが、背もたれに骨盤の後方をあてたりするなど、坐骨周辺にかかる負担を分散できるとより良いです。
他にも、上半身を前傾することになるので、テーブルに肘がおけると、坐骨周辺にかかる負担の一部が肘にかかり、さらに、足裏にもかかるようになるので、負担の分散度が高まります。
肘を置いていないと、腕の重さを支える肩や首回りの筋肉の負担も増大するので、肘が置ければ、それらの負担も軽減できて一石二鳥ですね。

そして、結構見落とされがちなのが、臀部、太もも裏への圧迫です。
これらの部位が長時間圧迫されることで、下半身の血流が滞り、下半身の冷えにつながったり、痺れにつながったりします。
おすすめは、またがるように座れる椅子です。
以下のようなものです。

座面が二つに分かれたまたがれる形状に緩やかになっています。
それぞれの座面が外側に向けて斜めになっているので、臀部への圧力を逃がしてくれます。

これはほぼ自転車のサドルに近い形のイメージですね。
足を閉じているいるよりも、ある程度開いているときのほうが、身体の構造上骨盤が立ちやすく、つまり、股関節の90°を保ちやすくなりますし、太もも裏への圧迫がなくなるので、前述の圧迫による症状の大幅な軽減が見込めます。
着るタイプ
着るタイプは、シャツだったり、ベルトだったり、女性であればブラジャーもあります。
加圧シャツや、補正下着も、姿勢矯正とは別の機能を押していることが多いですが、姿勢矯正をさせることによって実現しようとしています。

加圧シャツ

ベルトタイプ

これも加圧シャツ

ブラジャーってそもそもよくできているなと思ってて、前方にある重たいものものを支えるには最適ですし、構造
的に実際筋肉に同じ働きをするものがあります。
基本的にはおへそより上あたりの姿勢を保持を助けることが目的ですが、中には、パンツと組み合わせで腰周りから骨盤にかけても保持を助けてくれるものもあります。
着るタイプの特徴は、伸縮性のある素材が、本来背中の筋肉で行われる背骨を伸ばす作用、腕・肩甲骨を背骨とつなげる作用をサポートすること目的としていることです。
加えて、腰回りもサポートするものは、腰の筋肉の負担を肩代わりすることも機能になります。
腕・肩甲骨を背骨とつなげ、体幹部に乗せるところまで引き寄せられれば、結果的に腕の重さを吊るして支えている首、肩周りの筋肉の負担を軽減することができ、肩こりや首コリの解消につながります。
関連する知識としては、以下を参考にしてもらうといいでしょう。
着るタイプでは注意してもらいたいことがあります。
反り腰の人は、グッズの使い方によっては、反り腰を助長してしまう可能性があることです。
とくに、シャツのように全面から引き締めるのではなく、ベルトのような局所的に保持しようとするものについては注意が必要です。
そこまで強い力が出るようにつくられているものはほとんどないと思いますが、念のため。
着るタイプの姿勢矯正グッズのメリットとしては、良い姿勢を感覚としても楽に取りやすいことです。
着るタイプは本来使われるべき筋肉を補佐するように機能するので、本来使われるべき筋肉が発揮する力が少なくて済み、その分自分の力で良い姿勢をとるのがしんどいと感じる人にとっては大きな助けになるでしょう。
ただ、このメリットはそのままデメリットにもつながってしまいます。
というのは、本来使われる筋肉が発揮する力が少なくなるということで、それらの筋肉が必要な程度鍛えられず、矯正グッズに頼れば頼るほど、それなしでは良い姿勢を保つことが難しくなってくるということです。
人間は、ただ立っているだけでも、姿勢を制御するためにさまざまな筋肉が意識することなく使われています。
それは、重力が存在し、身体の各部パーツが重力に引っ張られてポロッと落ちてしまわないように、筋肉には自動で働く機能が備わっているからです。
宇宙飛行士が宇宙から戻ってきたときに、立って歩くことが困難になってしまうという話を聞いたことがありませんか?
宇宙は無重力なので、姿勢というものがそもそも問題にならず、姿勢を維持する筋肉が働かなくて済むようになって、弱くなってしまうからです。
着るタイプの姿勢矯正グッズは、姿勢維持をする筋肉を補佐することで、無重力とはいわないまでも、重力の影響を軽減させるといっても過言ではない機能を発揮するわけです。
また、筋肉が使われないということは、筋肉を使っている感覚も得られないということです。
本質的に姿勢を改善していくためには、身体各部の筋肉が使われる感覚を敏感にして、良い姿勢のときの感覚を基準としてもち、姿勢が崩れたときに気づけるようになることが必要です。
その感覚を養えないということは、本質的な姿勢矯正ができないということです。
なので、着るタイプの姿勢矯正グッズは、ずっと使い続けるのではなく、一時的に頼るべきものであるということを心得ておく必要があるでしょう。
トレーニングにおけるウェイトトレーニングベルトにも似たようなことがいえるので、参考になるでしょう。
記事 ウェイトトレーニングベルトをつけることのメリット・デメリッ
寝具タイプ
寝具タイプは、枕やマットレスといったものがほとんどです。
以下のようなものですね。

枕

マットレス
睡眠というのは、人生の中でおよそ3分の1を占める時間になります。
その時間をどう過ごすかによって、身体に与える影響も大きく変わっています。
寝具タイプの特徴としては、身体を重力の影響から解放し、筋肉に負荷をかけないようにすることで、筋肉を休めることを目的としていることです。
よって、寝るだけで本質的な姿勢の改善をするわけではありません。
良い姿勢といっても、重力がある以上、筋肉が受け持つ負担は0にならないため、確実に披露していきます。
疲労が限界を越えれば、良い姿勢について理解していたとしても、良い姿勢をとることが困難になります。
だからこそ、休める時間も重要になってくるんですね。
寝具タイプの姿勢矯正グッズを使いこなすためには、どのような状態であれば、身体の各部筋肉が休めるかを考える必要があります。
細かいことを指摘しだすとキリがないので、もっとも重要な点についてお伝えします。
筋肉が重力から解放されるためには、身体の各パーツを寝床の上に置いてやる必要があります。
つまり、寝床からどうしても浮いてしまう部分になんらかの対処をして、浮かないようにしてやる必要があります。
仰向けを基準に考えると、大きく浮いてしまう部分は、首の後方部分と、腰の部分ですね。
この2箇所に対して浮かないようにするためのものがあれば、筋肉が重力からしばし解放され、休むことができるのです。
首の後方の部分は枕でカバーするのがいいでしょう。
頭の位置が高いと、これも首に負担をかけてしまうので、あまり高くない、もしくは高さを調節できるようなものが理想的かと思います。
理想を目指すなら、オーダーメイドで作ってもらうという手もあります。

腰に関してはマットレスでカバーするか、腰の反り具合が大きければ、クッションやタオルを丸めたものを入れるといいと思います。
とにかく、寝転んで力を抜いた時に、寝床と身体の間に隙間がなく、体重を預けられる状態になれるのがベストです。
マットレスは水に浮いているような、包み込まれるような感覚があると理想的でしょう。
以下の寝具は、支えが1830もの点として分布していることで、身体の荷重に合わせて沈み込んでくれて、包み込まれるような感覚に近くなるのではないでしょうか。

これは個人的に買って試してみたいです。
あと、寝方について、仰向けの場合にもう一つ注意するといいことがあります。
それは、大の字になるということです。
身体の状態にもよりますが、「大」のような姿勢になるときに、手足の力がもっとも抜けやすいのです。
なので、ベッドで寝ている人だと、小さければはみ出してしまうので、大の字になると手足がはみ出したりするくらいなら、床で布団引いて寝た方が身体が休まります。
スペースがとれないという人もいると思うので、できる限り大の字に近づけるくらいでいいと思います。
僕も、このことに気づいてから、ベッドはやめました。
そして、自分の部屋が狭いので、完全に大の字になれるように、周りのものを片付けたりしました。
今ではなんとかギリギリ大の字で寝れるスペースを確保できています。
足裏補正タイプ
足裏は、立っている場合に唯一地面に接している部分になります。
なので、足裏の状態が身体全体の姿勢に影響します。
足裏補正タイプの特徴としては、足裏と組み合わせることで、足の骨にきちんと骨の積み木の底としての役割を担わせることで、全身の姿勢を矯正することが目的としていることです。
インソールをよく見かけます。

足裏補正タイプのメリット、デメリットは、着るタイプと共通します。
良い姿勢を保つ助けになってくれる反面、それなしでは良い姿勢を保つのが困難になるということでしたね。
これに加えて、足裏補正タイプについては注意点があります。
それは、土踏まずをカバーするような作りになっている場合があるということです。
土踏まずは、本来隙間があってその隙間を潰しながら土踏まずの筋肉を伸縮させることで衝撃緩和をしています。
土踏まずをカバーされると、その衝撃緩和機能もグッズ頼みになってしまうことが懸念されます。
また、足裏への適切な荷重の感覚が感じづらくなってしまうかもしれません。
足裏への適切な荷重は、重力と身体構造の関係から、大まかに、踵に6、親指の付け根の母趾球に3、小指の付け根の小趾球に1くらいの比率でかかっていると適切であると言えます。
足裏については、以下の記事を参考にしてください。
ストレッチ補助タイプ(運動器具)
昔、ぶら下がり健康器具が流行った時期がありましたが、ストレッチ補助タイプはまさにそういう類のものです。
ストレッチ補助タイプの特徴は、身体の柔軟性を向上させ、良い姿勢を取りやすい身体状態にすることを目的としていることです。
ここまでお伝えしてきた姿勢矯正グッズの中では、最も根本的改善が見込めるグッズになります。
そして、それがメリットです。
反面、デメリットは自ら身体を動かさなければならないという点です。
ストレッチ補助タイプ以外の姿勢矯正グッズは、着るだけ、座るだけ、寝るだけなど、自らは何かをしなくても済むようなものでした。
しかし、ストレッチ補助タイプは、自ら使って身体を動かさないといけない手間がかかるんですね。
買うときは、「やるぞ」と意気込んでみても、変化がなかなか現れないし、だんだんと面倒くさくなってくるものです。
身体の変化には時間がかかりますからね。
なかなか変化が見えなくても継続する根気強さが必要です。
また、ストレッチ補助タイプでは、継続しやすように、できるだけ簡単にできるものがいいと思います。
以下のような、背骨を反らすだけみたいなところからはじめてみたらいいんじゃないでしょうか?

以上で、長くなりましたが、姿勢矯正グッズのタイプ別の詳細についてお伝えしました。
改めていうと、ストレッチ補助タイプ以外は、本質的な姿勢矯正にはなりづらいことを理解しておかなければなりません。
道具に振り回されるのではなく、道具を使いこなすために、まずは必ず「姿勢とは何か?」「良い姿勢とは何か?」「どうなれば良い姿勢であるといえるのか?」については、この記事で参考としてあげた別記事にて確認し、理解しておいてください。