「お尻の小さな女の子~」という歌詞のアニメの歌が流行ったように、プリっとした引き締まったお尻は魅力的ですよね。
女性がよくそのようなお尻に憧れているのを耳にしますが、引き締まったお尻への憧れは男女を問わないものだと思います。
というのは、そのような発達したお尻というのは、人間としての象徴ともいうべきものだからです。
実は、お尻の大きさは「ヒト」を特徴づける、他の動物との大きな違いをあらわすものなのです。
人間と他の動物との大きな違いとして、二足歩行を日常としているかどうかが挙げられますよね。
この二足歩行を可能にしているのが、発達した臀筋(お尻の筋肉)のおかげなのです。
他の動物で、人間ほど身体に対して臀筋が発達しているものはいないでしょう。
というのは、四足で生活していた時代では、背中からお腹に向かって重力を受けておりました。
なので、頭を支えるために首の筋肉や、内臓を支えるために腹筋はよく発達したでしょうが、大臀筋はそこまで重要なところを担っていませんでした。
ところが、ヒトの祖先が二足歩行に移行するにつれて、重力を受ける方向が頭から足に向かって重力を受けるようになりました。
二足で立つためには、骨盤を起こし、背骨を起こし、後ろ足の上に骨の積み木を積み上げてやることが、確実に身体の負担も少なくなります。
そのためにはさまざまな問題があったでしょう。
身体に対する重力の向きが90度も変わるわけですから。
もし家が、どこかの壁が床になるようにいきなり90度向きを変えたらどうなると思います?
家具はひっくり返る、物は飛んでいくは家の中がぐちゃぐちゃになるのは想像できますね?
この例は極端ですが、直立二足になるということは、人間の身体の中でそれくらいインパクトのある変化が起こるということです。
血液循環の問題もあったでしょう。
足元から上半身まで血液を戻すというのは相当大変なことだと思います。
内臓の支持の仕方の問題もあったでしょう。
それまでだったら、内臓はだいたい背骨にぶら下げていれば支えられていたでしょうが、重力方向が変わったおかげで、内臓の支持も変更を余儀なくされたでしょう。
身体のバランスの保ち方も大変だったと思います。
今まで4つの足だったものが2つになるのですから、相当不安定になったはずです。
それをどうやってバランスを保つようにするかというのは大きな問題だったはずです。
骨の積み方にも問題が出てきたでしょう。
バランスの問題にもなりますが、これまでの骨格をそのまま二足にしても、身体の支えとして万全な機能は得られないですよね。
四足には四足なりの、二足には二足なりの合理的な積み方があります。
こんな感じでいろんな問題があったでしょうが、中でも、最も大きな問題といってもいいものが、骨盤をそれまでよりも90度も起こしてやるということではないでしょうか。
骨の積み方、バランスに大きく影響するのがこの骨盤を起こすことです。
そんな偉業を見事成し遂げてくれたのが、他の動物と比べても類を見ないほど発達した大殿筋です。
しかも、大臀筋の偉業はそれだけではありません。
直立二足において歩行することも可能にしたのです。
直立二足で歩くためには、骨盤を起こしてきた状態から、さらに脚を後方に運ぶということをしなければなりません。
これ、四足動物では絶対必要ない動きです。
四足動物でいうなら、足が上を向くまで後方に回してくるってことですから。
四足動物なら45度くらい脚を後方に運べれば、快適に走り回ることができるでしょう。
つまり、大臀筋の出る幕はほとんどないと言っていいでしょう。
「え?馬ってめちゃくちゃ筋肉もりもりなお尻してない?」
って思われるかもしれませんが、実はあれはハムストリングスといわれる太もも裏の筋肉が発達したものです。
四足動物が脚を後方に運ぶ力を得るならば、ハムストリングスから得るのが効率がいいんですよね。
大臀筋は脚を上方に向かわせる力になってしまうので、効率が悪いんですよね。
しかし、骨盤が90度起きることになった人間は違います。
四足動物でいう脚を上に運ぶ力こそが、人間が脚を後方に運ぶ力となるのです。

骨盤を起こした状態で脚を後方に運ぶということは、後方に限界まで動かした脚を、さらにもう1段階後方に運ぶという無茶ぶりを課すことになるのです。
しかし、人間の大臀筋は目覚ましく発達し、見事にその無茶ぶりに対応してきた。
だからこそ、発達した尻の筋肉は人間の象徴であるといえるのです。
また、大臀筋のみならず、臀筋全体でみれば、バランスの問題の解決にも一役買ってくれています。
殿筋が主に関係してくる関節は、図でも示したように股関節です。
股関節は、球関節に分類され、非常に動きやすい関節です。
ただし、逆にみれば安定性が悪いともいえます。
また、人間は前述したように二足歩行ですが、この世の中に二本足のものが他にあるでしょうか?
僕が思いつくのは、はしごくらいなものですが、このはしごでも壁に立てかけて使わなければなりません。
繰り返しになりますが、二本足で立つ、歩くということは、それだけ不安定なのです。
そんな股関節と二足歩行という超不安定な部分を支えるのが臀筋群なのです。
ただ、引き締まったお尻に憧れる人が多いように、多くの人がこの臀筋をうまく使えていません。
特に、女性に多いのですが、ふくらはぎや太ももの前に力が入ってしまって、臀筋がお休みしてしまっている人がいます。
そんな人は、ふくらはぎのむくみや太ももの太さで悩まれている人が多いです。
お尻の小さな女の子が引き締まったお尻ならばいいのですが、ただ単に小さいだけなら問題も多いのです。
自分が臀筋を使えているか知るためには、まず、普段歩いた時にどこが疲れるか気にしてあげてください。
ふくらはぎがしんどいようなら、臀筋を使っていない可能性が高いです。
そんな人は、ぜひ、スクワットに挑戦してみてください。
僕のお伝えしている方法であれば、臀筋に力が入りやすいですよ。
スクワットに関しては以下をご参考ください。
→安全で力を発揮しやすいスクワットを考える上で重要なこと
→効率的に力を伝えられるスクワットを行う上で気を付けるべきポイント
補足記事
→「立つとは反らす」ことである